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いつまでも子どものままで

Gunosy炎上とハフィントン・ポスト、楽しいインターネットの未来

Gunosy炎上以前からこの問題はあった

[衝撃]Gunosyはただの「はてブ拡張サービス」だった?衝撃の分析まとめ - NAVER まとめ
 僕も登録していたウェブサービスGunosy」が、炎上しているらしいと、はてブホットエントリを見て知った。その内容は「Gunosyが配信してくれる記事は結局はてブホットエントリと同じじゃないか!」というもの。
 別にもういろいろな人がいろいろなことを言っているので何を言っても既視感のある言葉にしかならないが、僕がこのNAVERまとめを読んで思ったのは「どういうプログラムで動いてるのかは知らんが、ほとんどそういうサービスなんだから仕方ないだろ」くらいのものだった。
 この炎上のあと、Gunosyが公式に炎上に対する釈明&所感をブログで公開。Gunosyが記事を配信する

現状、以下のフローで配信準備を行っております。
・前日にFacebookTwitterでの話題に上がった記事や各種RSSなどから収集
・ユーザー様のtwitterFacebookの行動や登録後Gunosy内でのクリックログからユーザーの特徴を解析し、その特徴にあった記事をスコア付けし推薦
・指定頂いた時間にユーザー様に配信

Gunosy blog - ここ最近のGunosy関連の批判についての所感

 TwitterFacebookで話題の記事を、ユーザーのTw/FBの個人情報を分析して分配するという、人(ユーザーアカウント情報)をベースにしたアルゴリズムが組まれているらしい。いくらTw/FBを言語解析することで個別のユーザーの特徴がわかっても、その特徴のなかのひとつに「Tw/FBユーザー」という他ユーザーとの共通項がある以上、Tw/FBで話題の記事が配信されてしまうというのは仕方がない。
 実は、同様の問題は以前からあった(というのを僕はだいぶ前からひとりぶつぶつ言っている)。この例を出したほうがわかりやすいと思うので、とりあえず見ていただきたい。Last.fmのリコメンド機能と「テイストの似たアーティスト」である。
 試しにポストパンク・リバイバルの代表格といわれるFranz Ferdinandの「テイストの似たアーティスト」を見てみよう。

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 Franz Ferdinandがリバイバルとして扱った「ポストパンク」に扱われるバンドは、3ページ目になってやっとJoy Divisionが出てくる程度。しかもそれがThe Beatlesと並んで出てくる。確かにフランツはビートルズの影響は受けているが、ポストパンク・リバイバルからポストパンクの源流を探っていくときには、ノイズにしかならない。
 続けて。同じポストパンク・リバイバルでも、日本のバンドを見てみよう。The Telephonesの「テイストの似たアーティスト」のページである。

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 17ページまで、Joy Divisionはおろか、彼らが影響を受けたであろうFranz FerdinandLCD Soundsystemなどのポストパンク・リバイバルさえ、一切出てこない。これは、The Telephonesを好きなユーザーが別にポストパンク・リバイバルを好んで聴いているわけではないし、海外のポストパンク・リバイバルバンドが好きなユーザーがThe Telephonesを聴いているわけでもないからそうなっているのである。
 挙句ももクロやらエレファントカシマシやらが出てくるほどだから困る。少なくともThe Telephonesが好きな友人にエレカシを紹介する勇気は、僕にはない。もちろん、そういう偶発性があるから面白いとも言えるが、少なくともそれではレコメンド/キュレーションサービスとは言えないと思う。
 Gunosyの炎上の火種となったキュレーションの精度の低さは、このLast.fmのリコメンドの精度の低さと同じ原理である。同じタイプのユーザーが好むものを紹介しても、そこから何も広がりはない。ただその周辺にある(Gunosyの場合は)ネットの記事/(Last.fmの場合は)音楽が勧められるだけなのである。

 『「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)』に代表されるような集合知主義は、そのままレコメンド/キュレーションサービスに利用すると、結局ポピュリズム的に「とりあえずみんなが話題にしている」コンテンツだけが紹介され続けていくというのは必然的で、それは東浩紀が『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』で提示したような議論が話題になってからずっと、欠点があることは明らかであった。そのような当たり前のことを当たり前に批判しても、あまり面白くない。それでビジネスをやってるのが阿漕だという批判も、JX通信社の米重さんが指摘しているように、そもそもネットはサービス開発においてオープンソースの名のもとにエコシステムが成り立っているのだから、通用しないはずである。

ついに日本上陸。ハフィントン・ポストはメディアを変えるか

ハフィントン・ポスト - ニュース速報まとめと、有識者と個人をつなぐソーシャルニュース(ハフポスト、ハフポ)
 話は変わって。今日、新たなネットメディアとしてハフィントン・ポストが日本上陸。Twitter上では大きな話題となった。早速「失敗する」と批判(?)されているが、これに呼応して東浩紀津田大介がツイート。


 二人はどちらも、丸山眞男のいう「タコツボ化」が相も変わらずこの日本で起こっている現状を指摘している。先にあげたGunosy/Last.fmも、「なんとなく話題になっている記事/音楽」というタコツボから抜け出せない構造になっているという点で、かなり似ているのではないだろうか。この問題に対する東=津田の回答は「編集がどれだけ見つけてこれるか」、というものだ。では、この課題にハフィントン・ポスト日本版が応えきれているかというと、そうは言えそうにない。ハフィントン・ポスト日本版のトップには、津田大介佐々木俊尚田原総一朗、政治家では枝野幸男野田聖子ら、ウェブ上で既に一定の地位を得た者の名前が並ぶ。東浩紀は「編集者ってほんと趣味イコール仕事で自分たちの業界の本しか読まないから、みな注目しているひとが似ている。同じひとを取り合って新書だしたり雑誌つくったりしている。そしてあっというまに飽和する」と批判するように、ハフィントン・ポストもまた、みなが注目する同じ人で構成されてしまっているのだ。また、これ以外にも何人か僕の知らない投稿者がいるが、少なくとも現在のUIでは、そこには目が行かない以上、どうしようもない。ハフィントン・ポスト日本版は、この課題を乗り越え、新しいライターを輩出していけるのだろうか。

楽しい未来を夢見て、情報を発信し続ける

 今回指摘したGunosy=Last.fmの問題点は、現在のメディアが抱える最大の課題であり、そしてその課題を乗り越えた先には輝かしい未来が待っている、と僕は勝手に思っている。もちろん、その先にはまた新たな課題があるのだろうけれども。
 ただ少なくとも、現状その課題をプログラムで解決することは、できないようだ。少なくともGunosyやvingow、NAVERまとめなどが同時に登場してキュレーションの時代を築いたほんの一、二年前に比べ、僕は今回のGunosyの一件で夢見ることができなくなったように感じている。そして、プログラムで解決できない現状だからこそ、東=津田が指摘するように、編集者の手腕が問われる時代であることは、もう何年も前から指摘されている。
 「個人による情報発信ができるようになった」と叫ばれて久しい。その間もいくつものウェブ炎上が起こり、リテラシーの重要性が強く認識されている。それでも、インターネットは楽しい。はてブだってTwitterだってFacebookだって、先に問題として挙げたGunosyだってLast.fmだって、使っているだけで新しい情報がどんどん入ってくる。新しいサービスはどんどん生まれる。こと音楽の分野でいえば、もはや違法ダウンロード刑罰化後も、合法的に無料で音楽をダウンロードできるように配信するネットレーベルも多数生まれ、それに呼応して音楽/動画配信サービスも進歩してきた。Bandcampにもぐれば常に新しい音楽との出会いがある。
 こんな楽しいインターネットで、自明の問題を取り上げて大騒ぎしてなんなんですかと。もっとインターネット楽しんでいきましょうよと。