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いつまでも子どものままで

「桜の花びらたち2008」に見るAKB48の性の解体

 

僕はアイドル、特にAKB48が大好きなのですが、

AKB48のデビューシングル「桜の花びらたち」は名曲です。

特に2008年にセルフカバーという形で発売された「桜の花びらたち2008」は、

曲調にあった淡い青春を描いたPVがあり、これがまた素晴らしい。

前にこの素晴らしさをTwitterで何度かつぶやいたのですが、

せっかくなのでブログにまとめて世に広めてみようと思います。

 

あらすじ

 

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PVのストーリーのメインの登場人物は、前田敦子大島優子河西智美小嶋陽菜峯岸みなみの五人。

しかしながら、小嶋さんと峯岸はそこまで心理描写がされているシーンがありません。

今回は、前田・大島・河西の三人が演じる女子高生の描写を中心に追っていきます。

 

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曲が始まる前、卒業式の後、美術室で前田と大島が高校生活を振り返っています。

「もっと先になったら、いまのことどう思い出すんだろうね」。

そういう大島に、最初は「そんなのわかんないよ」と言っていた前田だが、その前田は大島の表情を伺ってすぐに、「忘れないよ、絶対」。

 

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歌の二番のはじまりのあたりから、美術の授業のシーン。

 

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河西智美大島優子におちゃらけた態度をとります。

 

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これに対して大島も絵で対抗。

 

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前田は、仲良くじゃれあう二人に浮かない表情。

 

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教師(外国人)にぞっこんの河西は、先生が来ると謎に真面目になります。

 

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それをすこし苦い表情で見つめる大島。

 

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河西は卒業式のあと、先生に告白しようとしますが、その直前、

 

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先生と別の女性の先生が仲良くしている姿を目撃してしまいます。

そこに偶然大島が居合わせてしまいます。

 

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思わず大島に抱きつく河西。予想外の行動に驚く大島。

しかし大島は河西を受け入れます。

河西と大島の身長差は、辛うじて河西のほうが高いくらいなのですが、

ここでは階段の上に立っている大島のほうが身長が高く見えます。

カメラから見ただけでは、まるでふたりは抱きあう男女のようです。

 

一方、まだ卒業式のあと、美術室に残っている前田は、昔のことを思い出しています。

 

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その場のノリで像にキスする大島。

 

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それを見て前田は不安げな表情をします。

彼女の揺れ動く気持ちが、カメラワークにも現れています。いい描写です。

このときの出来事を思い出し、前田は次のシーンで、

 

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大島がキスした像と同じ場所に、キスをします。

ここのカメラワークが素晴らしすぎる。これはぜひ見てください。

性別を超えた淡い恋の切なさを感じます。

 

彼女たちは卒業式のあとのそれぞれのイベントで、

高校生活に残した思いを清算し、旅立っていきます。

 

 

AKBにおける性の解体

このPVは女性三人を用いて恋愛関係を描いていますが、

あまり同性愛の生々しさを感じません。これはなぜでしょうか。

もちろん、彼女たちがまだ若いから、女性の同性愛だから、

といった理由もあるかもしれません。

(そもそもなぜ男性の同性愛は女性の同性愛よりも嫌悪されるか、

 という問題も議論のテーマになりえますが…)

 

しかし、そもそも僕はこのPVに同性愛を感じません。

むしろ大島優子が演じるキャラクターからは、少年らしさを感じます。

では、三人の登場人物が全員女性であるにもかかわらず、

異性愛を描けている(ように見える)のはなぜでしょうか。

 

おそらく、AKB48はそのメディアへの露出やメンバーのプロデュースによって、

性を意識的に解体しているからだと思います。

何を言っているのか自分でもよくわからないので、図にまとめてみました。

 

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登場人物は全員女性です。しかしながら、誰しもが「男らしさ(masculity)」と「女らしさ(feminity)」を持っています。

大島に片思いする前田・大島に抱きつく河西は女らしさを強調し、

PV内では女性として描かれていますが、

こと大島に限っては、その元気なキャラクターから男らしさを見出し、

PV内では男性として描かれているのです。

 

河西が大島に抱きつくシーン、大島を階段の一段上に置き背を高く見せる演出。

また、小嶋陽菜でも板野友美でも渡辺麻友でもなく、

あどけなさとエロスが同居した魅力を持つ河西智美をキャスティングしたこと。

これらは異性愛的に描くべく行われたであろうプロデュースかのように思えます。

 

 

しかし、彼女たちはPVの中でのみ性を解体し、女性ながら男性を演じることが可能であるわけではありません。

この「桜の花びらたち2008」では男性性を演じていた大島も、「ヘビーローテーション」のPVでは下着姿で女性性を見せつけています。

メディアによって性を解体し、選ぶことができる。これがAKBの面白さの1つなのではないかと思います。

 

たかみなって異様にゆきりんをいじってくるよな - AKB48まとめんばー

たとえば、上の2chまとめでは、高橋みなみは女性でありながら少年として語られている一方、

AKB歌劇団では女性を演じています。

そしてこのAKB歌劇団で男性を演じたダブルキャスト、秋元才加宮澤佐江も、

ここでは男性性が強調されていますが、

ほかのメディアでは平気で女性性を強調したアイドルらしい振る舞いをします。

メディアごとで求められる性を選択し、その性を強調するさまが確認できます。

 

 

グループアイドルファンのコミュニティにおいて「関係性萌え」は一種の文化です。

かつてモーニング娘。石川梨華吉澤ひとみの関係性がまさに男女かのように扱われていましたが、

AKBの場合、その人数の多さ故、それぞれのメンバーがそれぞれのメンバーと相対するときに、

メンバーに応じて強調する性を入れ替えてメディアに登場してくるのです。

この点は人数が異常なまでに増加した48グループならではの特徴だと思います。

 

 

女子中高生がもともと海軍の服であったセーラー服を着るという文化自体がまず服装倒錯が起こっています。

もともと日本の男性の感じる「萌え」は、解釈は数多あれど、現実の性的快感とは別のものであると言われており、

アイドルを見ているとそのさまを感じることができます。

特にアイドルはメディアには虚構として登場しますが、現実に存在する一人の人間であるところが面白い。

桜の花びらたち2008」のPVは、この日本のガラパゴス化した女性観、萌えなどを巧妙に用いた美しい映像作品です。